バス風景を行く [9]

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41 白く咲き競う水仙

(福井駅―越前海水浴場―呼鳥門―水仙ランド)京福バス

水仙と京福バス

福井駅からバスで一時間。美しき日本海に出て南下する。
そして険しい越前海岸を右に、左は崖が迫り、時々それを這いつくばるように白い水仙の花々が咲いている。越前海岸は波高く険しい。この季節に咲く花は少ない。そんな強い海風を受けて毎年自然に咲き競う水仙の花は素晴らしい。水仙の里公園を過ぎれば、福井市から越前町となる。この越前町の町の花も福井市の花も水仙。付近は淡路島、房総半島と並んで水仙の三大群生地。
夏は遠浅の越前海水浴場を通り、鳥を呼ぶ岩として名高い呼鳥門(こちょうもん)をすぎれば終点水仙ランドとなる。
越前ガニとも呼ばれている有名な冬の日本海で育ったズワイガニは冬の味覚の王様。美味でよく知られている。冷たい風受けて育った水仙がほころべば、春も近い。(高橋)


<2014年 12月掲載>

42 南の国、石垣島

東回り一周線(ターミナルー川平ーヨーン-ターミナル) 東運輸株式会社

樹林をゆくバス

近年温暖な人情と気候で南の国が静かなブームとなっている。特に団塊の世代からは永住の地として都市の人口集中型に相反して沖縄県は離島中心に人口増加ともなっている。
石垣島の中心地、桟橋目の前にあるターミナルより、中心地から郊外へ。そして、スーパーやどこへ行っても知られているファーストフード、ファミリーレストランが昼食時間帯かマイカーの列が絶えない。石垣島も。離島ではなくなった。やがて空港に着きその後やっと青空の下、緑の草原を駆け抜けて快走するする。どこまでも続くグリーンロード。
右に太平洋、左は山々が続く。宮古島に比べて面積は広いが人口が少ないのは平地が少なく山が多いからで、桟橋から空港の間に民家も集中している。そのため町中心地は車と人でいっぱいだった。でもそこを抜ければその左右には牧草地帯を北上。長く続いたこの風景から今度は西へ。川平湾にたどり着く。今度は南下してジャングルを抜け右に東シナ海眺めて出発地のターミナルへ。島内で運行されている路線の中、一周線に乗車すればその名の通りバスで石垣島を一周できる。


<2015年 4月掲載>

43 レトロな観光バス

銀河鉄道株式会社

田園地帯を走るRC701

レトロなバスには静かな田園地帯を走る姿がよく似合う。
東京都西部で貸切バス、路線バスを運行する銀河鉄道にレトロな観光バス、日野K-RC701Pが在籍している。
元草軽観光バスで当時の塗装をしていたが、今では国際観光の塗装に変更されている。ハンドルを握る乗務員は元々同社に在籍したことがあり、同型車両の使用経験ある運転士が担当することが多い。
撮影場所は、筑波山の麓、茨城県郊外。この日はテレビ撮影に東京からやってきたが、貸切バスなので誰もが貸し切っての運行が可能。観光地に駐車すれば、他社の乗務員などが懐かしそうに眺めに来て、大切に保有していることに皆、頭を下げている。ただし年式に対して非冷房車であることは、高原を走行していたので冷房は搭載されていなかったのだろう。暑いことは間違いないが、初夏のレジャー、夏真っ盛りでも緑多き避暑地へのお出かけには、窓いっぱいにあけて涼風あびて、一昔前のバス旅を堪能できる。
ほかにも観光地でなく毎日利用する生活路線にもレトロな車両が導入できないだろうか。可能なら駅前で毎日見ることができる。


<2015年 4月掲載>

44 落花生の故郷を訪ねて ~落花生畑を行く

八街駅―精米所―八街駅 ちばフラワーバス

落花生畑を走るバス

朝の東京駅前。通勤ラッシュで混雑する路線バス。到着する通勤高速バスにもサラリーマンが降りてくる。その折り返し便の反対方向の空いている便に乗る。千葉県の八街(やちまた)行は首都高速湾岸線から京葉道路を経て高速降り千葉市の住宅地を経由して八街駅にたどり着く。
駅前広場には、落花生のモニュメントが。八街市は、スイカ、メロンなどの果物の生産が盛んで新鮮なフルーツが味わえる。そして何といっても落花生生産で名高い。
循環バスに乗車、旧市街地で道幅は狭いがシャターは開いている商店街を行く。ピーナッツ専門店が並んでいるのもここならではの風景なのか。
落花生のままで、それからカラをとったなんきんまめ、そしてそのかわをとったピーナッツそのほか加工したまんじゅうやせんべい等の菓子も売られている。
交通量多く旧市街地でありノロノロとしか走れない。しかし、このように商店のウインドウを手にとって眺めていられる。
やがて郊外地へ出ると畑が点在し晩秋には、落花生畑は収穫が終わり乾燥させるためにボッチが広がる。とれたてでは、全く実は固まっていないが約半月乾燥させると固くなる。水田のワラボッチと違って、雨除けで青いシートがかぶさっているのが特徴。


<2015年 9月掲載>

45 柿が赤くなると

鳥取駅―竹市―徳丸―若桜車庫 日本交通(株)

柿の畑を走るバス

鳥取県、県庁所在地鳥取。秋になると梨、特に二十世紀の収穫は有名。
晩秋になると柿色にも染まる地区も。
鳥取駅から若桜車庫行に乗車。国道29号線若桜街道を南東に走る。しばらくすると家並も少なくなり田園風景が広がる。稲が刈り取られ木々は色づき、枯葉色に染まった田畑は、赤く染まった柿の木が目にとまる。付近は西条柿と呼ばれるが渋柿で、各農家の軒下にもつるされている。
昔は柿泥棒して喜んでいる子供がよくいた。柿を見ると連鎖反応で手を出すが、渋柿とは知らずに手を出してしまうとスリルを味わうだけの楽しみで終わってしまう。渋柿には手を出さないように注意したいが、今ではそんなことをする子供はもういないだろう。
写真ではわかりづらいが、やってきたバスはまだ新しい中型バスだった。地方都市の中でも日本交通は大型の新車が主流で運行されていたが近年、新車導入は変わらなくても車両は一回り小さくなったのが残念。利用者減でも運行回数減とならないよう、この風景がこの車窓がいつまでも見られるように願ってならない。


<2015年 10月掲載>


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